眠れない夜の暇つぶしに

茶色の小瓶
実に嫉妬深い女でね。俺のすることなすこと、すべて知っていないと気が済まないんだ。毎日、ポケットから財布から、スマホの着信...

人魚
「信じてないんでしょ、私の話。」色褪せた花柄のカーテンを透かして、強い西陽が照り付けていた。部屋の中は、まるで亜熱帯のジ...

嘘は嫌いよ
『嘘は嫌いよ。そんな噓、聞きたくない』あの娘、そう言って泣いたのよ。こぶしでバンバンたたきながら。信じらんないわ。私には...

わかってくれない
「あなたは私のことをちっともわかってくれなかった。いえ、わかろうともしなかったわ。」「そんなことはない。僕はいつだって君...

群れ
6時に起きて会社に行き、仕事を終えて8時に家に帰る。翌朝また同じ時刻に起きて会社に行き、仕事をして家に戻る。たったそれだ...

ペパーミントグリーンの風
ドラセナはベッドの枕元で夜通し闇を見張っていた。夜明け前のあいまいなひと時、彼がしばしまどろむのを僕は知っている。僕の体...

写真
「まあ、エリーヌ、よく来てくれたわね。さあ、上がって。遠いのにわざわざありがとう。坂道が長いから、今日みたいに日差しが強...

タコ
どうせ私はオツムが軽いのよ。あんたなんかに言われなくったって分かってるわ。こうして叩くとね、カラーンって音がする。アッケ...

春が来たら
春が来たら、君を迎えに行くよ。野山が雪で覆われる前、あの人は私にそう言った。雪が降り止み、川の氷が溶けて、明るい日差しが...

宇宙飛行士
「私、今度生まれ変わるときは、宇宙飛行士になるの。」「そいつはすごいなあ。」「果てしない宇宙をどこまでもどこまでも飛んで...