『嘘は嫌いよ。そんな噓、聞きたくない』
あの娘、そう言って泣いたのよ。
こぶしでバンバンたたきながら。
信じらんないわ。
私にはとてもそんなこと言えない。
そんなこと言う人がいるなんて考えたこともなかった。
私は嘘が好き。
だって嘘の方が素敵じゃない。
楽しいし、夢があるわ。
ホントのことなんて何の役に立つの?
汚くて、貧乏ったらしくて、悍ましいだけだわ。
ね、お願い、私には本当のことなんか言わないで頂戴。
きれいで楽しい嘘だけ言って。
ウットリととろける様な、思わず踊りだしたくなるような言葉をささやいて。
嘘でもちっと構わない。
頭がグラグラして天井と床がひっくり返ってしまう位、ドキドキするような嘘をいっぱい言って。
悲しいことはもうたくさん。
辛い現実なんて、いったい誰が見たいと思うわけ?
箱に閉じ込めて、きれいな噓の包装紙で包み、キラキラ輝く嘘のリボンをかけて飾っておくの。
パンドラの箱は開けない決まり。
私は嘘が好き。本当のことなんて、違う世界の話だわ。