実に嫉妬深い女でね。
俺のすることなすこと、すべて知っていないと気が済まないんだ。
毎日、ポケットから財布から、スマホの着信もすべて点検されてね。
出張先でも、1時間ごとに連絡しないと向こうから電話がかかってくる。
会議中だろうが、大事な商談中だろうがお構いなしさ。
帰れば帰ったで、根掘り葉掘り質問攻め。
どこに行ったの、誰と会ったの、昼に何を食べたのってね。
彼女に悪気がないのはわかっているさ。
付き合い始めた頃は、ああ、こいつ、四六時中俺のことを思ってくれてるんだなって、かわいい気がしたよ。
しかし、だんだん重荷でね。
日ごと彼女の紡ぎ出す糸で、絡めとられていく。
至る所に糸が張り巡らされて、ますます身動きが取れなくなっていく。
監視カメラと位置情報アプリに絶えず見張られているみたいだ。
彼女はほかのことにエネルギーを使う気はないのかな?
俺の全部をコントロールしたいのかな?
何のために?
彼女に食い尽くされてしまいそうだ。
そうしたら、彼女が俺になるのかな。
それとも俺が彼女になるのかな。
どっちも御免だ。
ある日俺は、うまい方法を思いついた。
彼女がすっかり寝入ったところを、つま先から引き寄せて小さく畳み、このロケットの中に入れてしまったのさ。ほら、耳に当てると奥の方で小さな金属的な音がするだろう。あいつの金切り声も、こうして聞くといいもんだ。
このロケットは、もちろん肌身離さず身に着けている。
これならあいつも文句はないだろう。