ひまつぶし人間観察

トイレのフタ

最近、蓋のないトイレによく出くわす。
デパートや公共施設など、不特定多数の利用者がいるところは、軒並みその方向へ進んでいるように見える。
施設管理者の側からすれば、蓋がなければ掃除の手間も省け、人件費の削減につながる。
また、他の人が触ったものに触れたくない、という人も多いらしい。
逆に、飛沫が飛び散るので、衛生的にどうなの?という意見もあるようだ。
が、医療施設でも蓋なしが多くなっているので、水流を調整するなどで大方解決できているのだろう。
バリアフリーのトイレは100%蓋なしだ。

一昔前の農家は家の外に肥溜めがあり、田畑の肥料として循環させていた。
祖母の家がそうだった。
板切れが渡してあるだけなので、足を踏み外して浸かる事件はしばしば耳にしたように思う。

トイレに蓋をつけるのは、そう遠くない昔の西洋式トイレの形状に由来するそうだ。
マリー・アントワネットのあたりまで、貴族から庶民に至るまで、居室の片隅におまるがあり、いっぱいになると窓の外へぶん投げる。
街中の暮らしは糞尿にまみれていたらしい。

「マルセルの夏」というフランス映画が忘れられない。
と言っても、ストーリーは全く覚えていない。
ほんわかとした内容だったとは記憶するが。

20世紀の初頭、10歳くらいの少年がひと夏をブルゴーニュの田舎で過ごす。
ある日少年は同い年の少女の住む館(別荘?)を訪れるのだが、彼女はあいにく下痢便が止まらない。
居間に置かれた椅子型便器に腰を下ろしたまま、ウンコを垂れ流しながら少年と会話していた。
室内は美しく、調度品も立派だ。
便器も、蓋を下ろせばそのまま椅子として使えるようになっている。
上流階級のお嬢様らしく、子供ながら素敵なドレスを着て、トイレから離れられずにいるのだが、何とも奇妙で滑稽で、衝撃を受けた。
何よりも、排泄行為がオープンであることに驚いた。

トイレの後に手を洗う。
これも近い将来なくなる習慣かもしれない。
自動でドアが開き、ウォシュレットで後始末してくれるのだから、手は汚れようがない。
100年後のトイレ事情、見てみたいものだ。

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